セッションレポート
三国志セッションレポート
<『山東の狼』と『鬼女伝説』>
文責:宇宙天才(大特価中) GM:“将軍”
“将軍”マスターの「三国志演技」です。昨年9月の拡大例会でのプレイだったかと思います。これが波瀾万丈・千変万化の内容で、「三国志演技」の野望型プレイとしては大袈裟に言えば一つのモデルになるかもしれません。
#野望型プレイの対極として忠節型プレイがあります。「桃園の誓い」に始まる武将たちの友誼・忠誠を描くもので「蜀」の劉備・関羽などが代表的人物と言えます。「三国志演技」でも本来はこちらが一般的だと思われます。
舞台は当然「三国志」。といっても正史ではなく演義の方です。吉川英治の小説や横山光輝のマンガを思い浮かべてもらうと助かります。曹操が乱世の奸雄で孔明先生が神がかり的な知略で大活躍するアレですな。
#知らない人は単なる宮廷陰謀モノと思って下さい。それでもOKです。
時代設定は反董卓連合軍の結成直前。序盤最大の悪役、董卓が洛陽で好き放題にやっている時代です。呂布が親衛隊長格で暴れ回っています。
PCたちは「東郡」の大守「橋瑁」という人物の配下という設定。PC1に相当する武人が大守に次ぐ地位にあり、他のPCはその周辺人物とのこと。史実では橋瑁も反董卓連合軍に加わっています。いまいち凡庸な人物であり、動乱の歴史の中で消えてゆく運命。
“将軍”から武人PCの能力値が『武力86、指揮83』であると説明される。さらには『山東の狼』という世に通った異名があるとのこと。歴代三国志シナリオの中でも武将として最強クラス。この数値なら歴史に名を残すほどの名将です。孔明先生を相手に数ケ月にわたって徹底抗戦し、糧道を断たれた後、敵味方に惜しまれながら華々しく自害することも可能といったところ。
英雄的なPCに単純に喜んだプレイヤー。だが、ここで重大な懸念が発生!
「おい、何と戦わせる気だ。まさか、呂布と一騎打ちでもさせる気か?」
そ知らぬ顔でプレイヤーから視線をそらし、不気味な沈黙を守っている“将軍”。その眼が鈍く光った(ような気がした)。
たまには武人もいいかと食指を伸ばしかけていた手がビクっと止まる。呂布とビグ・ザムには道を譲ることにしている臆病者の私。
三国志演技の世界でも呂布の武力は100であります。綺羅星のような勇将や猛将たちをも超越する中華最強の男。ロードス島ならカシュー王とベルド陛下を足して割らないといったところ。この手の人種には一騎打ちでは決して勝てない運命。
結局、プレイヤーの配置は以下の通りに決定。
| 武人 | : | 黄巾賊退治の英雄 | ・・・ | 11Sくん |
| 文人 | : | 武人の弟で野心家 | ・・・ | 宇宙天才(大特価中)、私 |
| 商人 | : | 主に内政担当か? | ・・・ | 明之介さん |
| 間諜 | : | 武人に恩がある男 | ・・・ | 逆神 |
| 女傑 | : | 大守の姪 | ・・・ | K |
ベテラン諸氏のサポートを受けながら、当時まだ2回生だった11Sくんが主役である『武人』にチャレンジするという雰囲気でしょうか。
私はいつもの『文人』に決まり。表には出さないが実は毎回悩んでいる。他の役柄でも策を立てかねないし、それでは舞台荒らしになってしまう。11Sくんが三国志演技に慣れていないことを考慮し、フォローしやすいように参謀役の「弟」という設定を付ける。PC内勢力的に優位を保つという意味もあるが、肉親ということで裏切りにくい『縛り』を自分にかけたつもりだった。
その後は自然な流れで、色々と遊んでみたそうな明之介さんが『商人』、女性キャラの得意なKが『女傑』という分担がスムーズに進む。半自動的に逆神が毎度なり手のない『間諜』に決定。うう、いつもすまない。PC選択の流れも考えないといけませんねえ。
#たまには薄幸の少女でもやってみる・・・気にだけはならないが間諜なら妥協可。
「三国志演技」における死亡率は何と言っても間諜が一番です。潜入に失敗しては頓死する。危険なプレイヤーが文人を担当すると使い捨ての駒にされる可能性もある。何よりもストーリー的に活躍するのが難しい。とまあ三拍子揃ったNPC向きの職種です。
ちなみに次に死亡率が高いのが戦闘のダイス目で突然死する武人。これも怖い。
大守橋瑁の姪という女傑(K)は、パーティー内で動きやすいように武人(11Sくん)に憧れているという設定をつけたらしい。女傑としては定番かも。
やがてキャラ紹介が始まる。プレイヤーの個性がよく出ているPCたち。逆にいつもの感じと言えなくもないのが難点かもしれません。
一方、我が兄上さまである武人(11Sくん)は紹介によると『山東の狼』の異名通りの根っからの猛将タイプであるらしい。なかなかに凄みのあるセリフが続く。いい感じです。
「牙を失って狼と呼べようか。頂きで吼えてこその狼だ」
「弟よ、後の始末は任せたぞ」
我が分身の異名は『山東の狐』に決定。狡猾細心にして傲岸不遜な野心家という悪役な性格は見飽きるほどに毎度の事。ただし、兄の武人(11Sくん)には一目も二目も置いているという設定が今回の特徴であります。
「兄上は狼、その爪で目の前の敵を引き裂けばいい。それ以外の雑事はこの私にお任せ下さい。この腹黒い狐めに・・・。ねえ、兄さん(語尾上ル)」
そして間諜(逆神)のセリフ紹介の番になる。
「おうおう、虎の威を借る『狐』って知ってるか!」
挑発的セリフに驚いて振り向く私。おのれ逆神、さては敵対宣言か?
「別に『誰』とは特定していませんよ。まあ、こういう状況もあるかなーと」
しれっとした表情でのたまわった逆神氏。ニヤリと不敵に微笑んでいる。こ奴も三国志で討死にすること幾度か。闘士として確実に成長しているらしい。両者の間で目に見えぬ火花が激突する中、先ほどの間諜の死亡率の話題がさりげなく切り出される。過去の事例をいくつか挙げてゆく私。
そう、これは逆神に向かって投げられた「牽制球」なのであります。もはや不治の病かも・・・。マルチゲーム的思考がなかなか抜けない。
「それに比べると女傑はぜんっぜん死なないねえ」とKが発言。
確かに女傑と商人はほとんど死んだ例がありません。両者とも自分の身を守る『超絶能力』が多い。女傑は色香で男を惑わし、商人は舌先三寸で乱世を生き延びてゆく。
#しかし、一寸先は闇とはこのことか。RPGとは本当に奥の深いものよ。
PC紹介が終わり、主要NPCがセリフ付きのリストで正式に紹介されてゆく。“将軍”は意外とマメな人なんですよ。と取引先代表としてアピールしておこう。
◆東郡大守:橋瑁(キョウボウ)
我々の仕える大守さま。良く言えば堅実な官僚的人物、悪く言えば無能な為政者といった風情。黄巾賊の残党に悩まされており、市井の一豪傑にすぎなかった『山東の狼』こと武人(11Sくん)を登用し、今でも何かと頼みにしている。
◆古参武将:王会(オウカイ)
大守・武人PCに次ぐ第三の地位にある武将。橋瑁への忠誠心はそれなりにあるらしい。実力と名声を兼ね備えた新参者(PC)のことを苦々しく思っているのが明白である。それを露骨に出している我慢のなさが二線級の人材。
◆大商人:徐允(ジョイン)
大守橋瑁に莫大な資金援助をしている商人。都にも色々と手づるがあるらしい。『山東の狼』の活躍ぶりに注目し、我々にも急速に接近してきている。気のせいかもしれないが喋り方が異様に怪しい。“将軍”の演技が面白すぎるだけなのか?
当座の敵対者はこの古参武将「王会」氏であるらしい。所詮は田舎のゴミ武将。武力86アーンド指揮83の英傑兄貴に比べればカス同然。加えて知謀に長けた文人の策。商人・女傑・間諜と人材的にも揃ったパーティーはまさに鉄璧の布陣かな。
「圧倒的じゃないか、我が軍は・・・」(年寄りはコレばっかだな)
などと勝手に妄想しながらプレイを始めてゆく。他のプレイヤー諸氏も余裕の表情を浮かべている。地元の話は前哨戦かな? その後で中央の董卓軍とぶつかりそうな気配が濃厚か。そうなると厳しくなるような予感も。呂布と一騎打ちは嫌じゃー。
セッションは東郡領内での黄巾賊残党の退治シーンから始められる。PCのデータを確認し、肩慣らしのつもりで2私6を取り出すプレイヤーの面々だったが・・・。
「ずんばらりん(野太い声で)。勝ったー(こっちは超テキトー風だ)!」
“将軍”のまさしく神速の戦闘描写。これを平然とやる神経が凄いだろう?
ダイスを振ることなく黄巾賊を平定。拍子抜けするプレイヤー一同。が、不思議なことに自分たちの強さを次第に実感してくるではないか。そうだ、我々はこんな賊など瞬殺なのだあ。や、やれる! 呂布とだって戦えるぞ。エイエイオー!(明らかな錯覚だが強気に転じたのは事実かも)
#まさに“将軍”マジック。真似すると大怪我をする可能性大なのでご注意されたし。
三百余りの首級を手土産に城内へと凱旋する。出迎えた民衆たちは何と数千人。熱狂的に武人(11Sくん)の名を連呼して褒め称える。とにかくすごい人気である。
序盤からちょっとした英雄気分のPCたち。大商人徐允の主催で祝宴も用意されているとのこと。途中、問題の古参武将の王会とも初遭遇する。
「はてさて、誰の首を取ってきたのやら。まともに戦ったかどうかも怪しいものだ」
手柄を無視されて敵意沸騰。序盤のライバルというよりも既に「敵」だ認識する我々。だが、今はまだ我慢の時である。PC一行は大守である橋瑁の元に報告に向かった。
「そうか。それはよくやってくれた。領民もさぞ喜んだことであろう」
ねぎらいの言葉をかけられる。大守橋瑁は温厚そうな人物であり、友好的な雰囲気でもあった。だが、自らは勝利の祝宴には出席しないと告げる。なぜだろうか?
「わしは今度の戦さに何の手柄もない。手柄を立てたのはその方らじゃ」
暗い表情の大守さま。PCたちの世辞追従にも応ぜず、今宵は疲れたと言って退席してしまう。少しヤバげな雰囲気である。古参武将の王会あたりに讒言されているのかもしれない。仕方なく大守抜きで酒宴に出る一同。ただし、橋瑁の姪である女傑(K)だけは心配して席から抜け、叔父の私室へと向かう。
ここで目配せを交わす文人(私)と間諜(逆神)。開始前の対立がウソであったような見事な以心伝心であった。巧みに忍び寄って聞き耳を立てることに成功する間諜。隠密潜伏のダイス目も順調の滑り出し。これからも仲良くしようぜ。
一方、姪に舞を一差し所望する大守橋瑁。それを肴に酒杯を干してゆく。
「そなたはあの男のことをどう思う?(暗い声で)」
「いずれは天下に名を轟かす英雄かと。叔父上の右腕となるお方です」
女傑(K)のナイスなフォロー。何といっても武人(11Sくん)に憧れていますからねえ。
「はっ、英雄か・・・。確かに武勇は秀れておる。領民たちもあの男の名を連呼しておった。だか、その中にわしの名は一言もなかったわ(苦々しく)」
吐き捨てるように言い放つ大守橋瑁に動揺するプレイヤー一同。“将軍”はこの種のセリフが上手すぎる。いや、『嫉妬』の達人ですな。
酒をすすめながら、「優秀な部下を持つことも英雄の美徳ですわ」と盛んに叔父をなだめる女傑(K)。PCの鑑ですねえ。ようやく落ち着きを取り戻してゆく橋瑁。
一方、酒宴もたけなわの頃。PC兄弟の野心に探りを入れてくる大商人徐允。諸々の理由から一瞬危うくなりかけたが無事に祝宴を終える。この後、文人(私)の希望によって、屋形に戻った武人と文人の兄弟が二人で酒を酌み交わすというシーンが用意される。
「兄上のご本心、弟の私だけにはお教えください。兄上はこのような地位で終わるようなお方ではない。ご安心を・・・。ここには誰もおりませぬ」
ううむ、と黙りこむ兄(11Sくん)。ここぞとばかりにたたみかける弟(私)。乱世には珍しくもない微笑ましい兄弟愛のシーン・・・と言うのは少し無理があるか。ここがPCたちにとって最初の分岐点になる一幕となる。
#はっきり言ってダース・ヴェーダーの気分。フォースの暗黒面はいいぞぉ。
11Sくんが遂に決断。我々は小さな一歩、だが偉大なる一歩を踏み出した。
「ああ、俺もこのままで終わるつもりはない。だが、これ以上言わせるな。お前なら俺の本心も分かっているはずだろう」
多少言葉につまりながらも、武人(11Sくん)は言い終えた。いや、そのお言葉を待っておりました。ここは黙ってうなずくしかありますまい。兄への個人的な忠誠度が80→90に急上昇した瞬間。「これ以上言わせるな」はなかなか言えるセリフではありません。11Sくんは男らしいセリフが似合うような気がしました。武人はハマリ役かも。
さて、黄巾賊退治から数日が経過し、東郡の政庁に近隣の河内郡の大守「王匡」からの使者が到着する。王匡は郡境にまたがった黄巾賊の討伐を提案してくる。賊は未だかなりの勢力を保っているらしい。ちなみに王匡と橋瑁の関係は付き合いがある程度とのこと。
とりあえず共同で軍議を開くことが決まり、PC一行が全権を委ねられて河内郡へ派遣される。一応の用心として四十人の精兵を伴ってゆく。
「そなたも行くつもりか? しかし、女子(おなご)の身では・・・」
大守橋瑁は姪の参加を多少ためらった様子だが、武芸を人並み以上にたしなんでいる女傑(K)は叔父の心配を杞憂と振り切って出発する。
そして、河内郡へ向かうの途中、突然に賊の奇襲を受けるPC一行。それなりに警戒はしていたものの、敵は山陰に巧みに伏兵していたらしい。
「取り囲んで逃がすな。東郡の将、いや『山東の狼』を討ち取れ!」
名指しで狙われる武人(11Sくん)の首。我々の行動を予測していたとしか思えない用意周到な罠。気づいた時には数百という何倍もの敵に完全に包囲されていた。虚を突かれて動揺を隠せないプレイヤー一同。
しかし、武力86という数字は伊達ではなかった。ほとんど武人一人の個人的な武勇だけで黄巾賊は戦術的優位も空しく力ずくでねじふせられてゆく。
#これが三国志演技の戦争ルールの大胆さ。武力の高い武人なら数万の軍勢を一人で蹴散らすことも可能。呂布がいる以上、明日は我が身かもしれないのだが。
「こ、こんな馬鹿な。『山東の狼』とは化け物か!」
ほうほうの体で逃亡を試みる賊将を文人が計略で捕らえて尋問シーンへ移行。どうやら城内に内通者がいるらしい。とある中級役人の名が上がってくる。
ここで文人(私)の提案でパーティーが二手に分けられる。武人・文人・女傑の三人は予定通りに河内郡の軍議に出席する。一方、情報収集能力に長けた間諜と商人が東郡に戻り、内通者の背後を調べるという分担になる。
#パーティー分割をすると各PCの見せ場が増える。フリの部類に入る提案。ただ、個人的にはこの時の提案は少しあざとかったかもしれないとも思うのだが。
馬を走らせて東郡へと戻った間諜(逆神)と商人(明之介さん)。問題の内通者の屋敷へと直行する。色々考えたものの、正面から面会を申しこむ商人。間諜は庭の片隅に隠れながら護衛を兼ねて付き添っている。
驚愕の表情で商人(明之介さん)を迎える内通者。黄巾賊の奇襲で死んでいるはずだから当然の反応と思われる。ということで限りなく『クロ』。用を思い出したので戻ったと弁明しておく商人。お互いに腹に一物で笑顔の二人。
酒の席が用意され、奥に通される商人。その隙に内通者は何者かに向かって使者を放っていた。間諜(逆神)が密かにその後をつけてゆく。
「私もあの時は戦場にいましてねえ。すべて知っているんですよ」
いきなり直球勝負をかける商人(明之介さん)。あなたを助けてあげようと提案するものの、交渉関係のダイス目が期待をことごとく裏切ってゆく。
「もはやこれまで。かくなる上は貴様を道連れにしてくれる!」
物騒なセリフの後、剣を抜いて襲いかかってくるNPC。商人PCが武器を持ち歩いているわけもなく、「ひえぇー」と思わず叫ぶ明之介さん。頼みの間諜(逆神)もどこかへ消えてしまっている(笑)。
史上初かもしれない商人同士の一騎打ちという珍シーン。武力はお互いに底辺の辺りでドングリの背くらべ。だが、武器のあるなしが大きな差を生んでしまっていた。明之介さんの大ピンチ!
他のプレイヤーはこの低レベルだが熾烈な戦いを固唾を飲みながら見守っていた。その場にいないのだから如何ともしがたいというところ。心ならずも苦笑が漏れる一同。
#明之介さんも商人で一騎打ちをするとは思わなかったでしょう。
今や斬り殺される寸前の商人。超絶能力(カード)を使えば助かるかもしれないが、その心理的余裕や状況的余裕が既になくなっていたらしい。
まさか見殺しにするわけにも、と文人(私)が遅まきながら介入。こんなこともあろうかと実は計略を用意していた、と特殊能力を使用する。ヤマトの真田さん的にとっても便利な三十六計の後ヅケ。
マスターに要求された情報分析判定にも成功。いや、これに失敗したら大変だった。商人(明之介さん)の背後に数人の兵を伏せておいたことにする。内通者の武力も最低なのですぐ取り押さえられる。
その頃、使者を尾行していた間諜(逆神)は古参武将の王会の屋敷へとたどり着いていた。やっぱりとうなずくプレイヤー一同。背後関係をさらに追求しようと合流したPC二人は内通者を引き立てて行く。
しかし、そこへ当の王会が警備兵の一団を引き連れて登場する。
「内通者とは一大事だ。わし自らが取り調べよう。まさか異存はあるまいな」
恫喝的態度で身柄を要求する王会。横槍に抵抗しようとする商人(明之介さん)だが、交渉が決裂すれば即戦闘という厳しい状況に撤退を余儀なくされる。生き証人を目前で奪われて悔しい思いの二人。ここは我慢の時であると軍議に向かった三人と合流して改めて王会との対決を図ることする。
#城内に残って工作する選択肢もあったかなとは思う。ただ、その場合でも東郡から逃亡を余儀なくされた可能性が高いかもしれない。
一方、別行動中の武人・文人・女傑は河内郡の政庁に到着した。途中で黄巾賊に襲撃されたことを告げ、とり急ぎ軍議をしたいと要請する。しかし、出迎えに現れた河内郡大守の王匡の様子がどうにもおかしい。我々の到着にひどく驚いた顔つきであった。
「いや待たれよ。まずは酒の用意でもさせよう。戦いの疲れを取るとよい」
酒宴に異存はなかったが、この男も怪しくなってきた。我々が襲撃されることを知っていたらしい。しかも、警備兵の表情にも殺気が漂っている。
名酒と山海の珍味が並べられ、美女を呼んで一行をもてなそうとする王匡。PCたちに口にするなと警告をささやく文人(私)。
臈たけた風情の謎の女性NPCが登場。王匡に酒をつぎながら小声で「大守さま、くれぐれも客人の皿には手をつけなさいますな」と言う。青ざめた顔でうなずく王匡。
この状況で飲み食いに走る奴がいるはずもない。しかし、小声と言いながらも判定なしで聞こえるし、PCにあからさまに警告しているようでもある。
何者だ、この女は? 怪しすぎるぞーというのが我々の共通見解であった。
「ささ、酒をどうぞ。たんと食べなされ。ほれ、遠慮なさることはない」
とにかく酒食を強要してくる王匡。体調不良を理由に辞退して、黄巾賊との戦いで活躍したとして雑兵の一人に食べさせる卑怯者の文人(私)。すると、不運な男は血を吐いてぶっ倒れてしまう。
「かくなるうえは・・・ええい、面倒じゃ。この者らを斬り捨てよ!」
警備兵が踏みこんでくる。というわけでまたしても乱戦に突入。
二回目なのでプレイヤーも余裕がある。多勢に無勢も何のその、武力86で押しまくる武人(11Sくん)。王匡本人を捕虜とすることにも成功する。
「わしは東郡の大守に頼まれただけだ。そ、そうだ。悪いのは橋瑁じゃ」
醜い弁明をする王匡。着々と武名を上げてゆく『山東の狼』に地位を奪われることを恐れ、二人の大守が共同して抹殺を計画したという図式であった。しかし、ここまで話が進んでいるとは思わなかった。
王匡を人質にして河内郡からの逃亡に成功する三人組。何とか一息ついた所で間諜・商人とも合流する。PC間で作戦タイムが始まる。
「かくなる上は是非もなし。我らの身を守る為には大守といえど橋瑁どのに死んでいただくしかありませんな」
文人(私)が下克上を進言。武人(11Sくん)の威力を体感していた面々に概ね異論はなかった。『山東の狼』という名声を生かして兵を募り、決戦に及ぶという構想。
しかし、そこでただ一人、肉親ということで橋瑁を弁護する女傑(K)。捕虜の王匡は必死で否定するが苦しまぎれの言いわけと見えなくもない。
「いえ、きっと何かの間違いですわ。叔父上が、橋瑁さまがそのなことをなさるはずがありませぬ。誤解を解くこともできるはず」
迷いが生じる武人(11Sくん)。余計なことをと思いつつ策を考える文人(私)。
そこへ謎のNPC美女がまさに唐突に再登場。先ほどの酒宴で会った女である。朧月という名であるらしい。らしいですな、“将軍”。
武人(11Sくん)に媚びを振りまきながら恩を売りつけてくる朧月。そして、懐から何やら一通の巻物を取り出した。これが何と王匡と橋瑁が交わしていた密書! まぎれもない橋瑁自身の筆跡とのこと。
「これは確かに叔父上の手によるもの。そ、そんな馬鹿な」
姪の自分の命をも見捨てていた叔父の裏切りを知り、改めて武人(11Sくん)への協力を誓う女傑(K)。だが、動揺の色は隠せるはずもない。女傑への配慮もあり、また戦略上の理由からも、この時点では主である橋瑁ではなく奸臣の王会を討つというポーズを保っておくことが提案される。
しかし、忠誠を確約した女傑(K)ではあったが、一度は必死に叔父をかばっただけに周囲の目はひどく冷たかった。この後は陣営内で孤立してゆく。
#まあ仕方がない。Kには悪いがあの状況では半隔離するしかなかった。
とんでもない隠し球を持っていた謎の美女朧月。なぜ味方するのかと問いつめても『山東の狼』の武勇に惚れましたと平然と言ってのける面の皮。朧月が消えた後に再び作戦タイム。だが、結論は変わらない。謎の美女はメチャメチャに怪しい。個人的な推測でも董卓の密偵の可能性が大である。
凡庸だが三万の兵を抱えた橋瑁が反董卓連合に加わるのを妨害する為、PCに反乱を勧めているのだろうと推測された。影で橋瑁をけしかけた可能性もある。しかし、それが事実だとしても『山東の狼』の弟としての決断も変わらない。
問題はいかに素早く勝利し、董卓が干渉してくる前に東郡の実権を手に入れるかという一点にあった。逆に言えば隙を作らねばよい。
東郡領内の村を通過する一行。しかし、村人の空気がおかしい。黄巾賊退治のおりには熱狂的な歓呼があったのだが今は不気味な沈黙が漂っている。街道で高札を発見する。大守橋瑁の命で立てられたものらしい。
「ひとーつ、郡の税金を私し」
「ひとーつ、婦女をかどわかし」
「ひとーつ、黄巾賊と裏でつながり、まともに戦わずに手柄を立てる」
高札を野性味ある野太い声で一々読み上げてゆく“将軍”。身に覚えのない罪状で糾弾されているような妙な気分を実感するプレイヤー。
これで大守との和解の可能性は完全になくなった。とはいえ、それを本気で望んでいた人間はPCに一人しかいなかったのだが。
#このシーンも最高でした。まさに木目の細かい演出。
橋瑁一派の誹謗中傷にもかかわらず『山東の狼』の声望は未だ根強く、反乱軍は三千の兵を集めることに成功する。
一方、敵将王会は東郡の城門を堅く閉ざし、籠城の構えを取っていた。打って出る気配は皆無である。糧食の蓄えも十分、兵力も二万という大軍である。いざ戦ってみると堅実な良将で意外に手ごわい相手という印象。
対する我々反乱軍側としてはすぐにでも野戦に持ちこみたいのが本音。籠城戦では頼みの武人(11Sくん)も活躍が限定され、急編成の軍だけに糧食にも乏しい。長引けば中央の董卓も干渉してくるかもしれない。と短期決戦が必須条件。
かくなる上は策を用いる他はないと作戦タイムを要求する文人(私)。といっても上策は一つしかない。女傑(K)を大守の元に潜入させ、実の叔父を殺させるという血生臭い計略である。しかし、非情な策をどうやって当のKに飲ませるかが難題であった。
ところが、意外にも女傑(K)が「自分が城に入り、叔父の大守を殺す」という策を自ら提案してきたのである。
#裏切り者の血縁として切り捨てられることを恐れ、プレイヤーとしてPCの新しい目標を模索していたKの一大決断であった。大守と武人の関係修復という当初の個人目標が失敗した以上、自分の唯一の利点である「有力者の血縁」を生かすにはこうするしかなかったとKは後に述懐している。
「いや、やれとは言いにくかったが自分から言い出すとは」と言いつつ、喜んで策を提示してゆく文人(私)。
「まず、前段階として第三十一計『美人の計』を使用。我々に虐待された女傑(K)が自ら逃げ出したことにして大守橋瑁の懐に入りこむ」
「決定打として第十一計『李、桃にかわって僵れる』を使用。女傑(K)が油断した橋瑁を自らの手で刺殺する。これで形勢は間違いなく逆転する」
「最後は盟主を失った王会を正面から短期決戦で打ち破る。計略の効果もあり、その時は敵軍を混乱させるも士気崩壊させるも思いのまま。優秀な能力を持つ武人(11Sくん)が陣頭指揮を取れば負ける理由が見つからない」
第十一計『李、桃にかわって僵れる』は大切なもの(自分や仲間)を犠牲にして大勝利を得るという計略。三国志演技のプレイ史的に見ても効果は最強。ただし、この場合、当然のことだが女傑(K)は死ぬか、それに匹敵する悲惨な運命が待っている。
PCが死ぬあるいは悲惨な運命となるとマスターも計略の効果を無下にはできない。計略の為に殺されたプレイヤーの怨念を利用するという点では『巫蠱の術』と言えるかも。とはいえ、本来は自己犠牲の為の超絶能力(カード)でしょう。
このオヤジまたやる気だぞー、と呆れるような顔の逆神。そうだよ、またやる気だよー。というかこれ以上に破壊力のある策はなかったというのも事実。
非情な策に激しく抵抗するK。第十一計『李、桃にかわって僵れる』を必死に避けようと代案を模索する。逆神や明之介さんも協力するが簡単に名案が出るはずもない。どのアイデアでも城内への潜入までは上手くいくが、大守謀殺と合戦勝利には不確定要素がつきまとってしまうのである。
君のキャラは愛する男の為に命をかけられないのか? と圧力をかける私。だが、それくらいでハイとうなずくKでもない。数分間の討議が続く。色々と議論をしただけに今さら城を力攻めというのも格好悪くなってしまったというよくある状況。
#個人的にはこの計略を使っても女傑は死なないとも思っていた。ただの間諜とは違って女性だけに失うものも多いので。マスター的にも色々と演出できる。
「しかし、私にもこれ以上の良策は浮かばない。これならば確実に我らが勝利できると思うのだが・・・。私とて兄上の為に命を捨てる覚悟はある。だが、これはあなたにしか出来ぬこと。それとも他に何か良い方法がおありか?」
プレイヤーとしてのYESは無理と判断して、キャラクターとして再び説得を試みる私。ダメ押し的に回答を『セリフ』で要求する話術であった。
#我ながら卑劣なプレイで反省してます。嫌がってるんだから不確定でも他の計略を使うべきだった。しかし、Kが自分で言い出したプランでもあるわけだし、ここまで押したから後の展開がはじけたのも事実でしょうね。
考えこんだ末についに折れるK。だが、この男はただ者ではなかった。
「分かりました。ですが、『一つ』だけ条件があります」
「武人(11Sくん)さま。この策が成就した暁には、私と正式に『婚儀』を交わしてくださいますか? 女の身ではしたないとは思いますが、それを約束していただければ私としても覚悟を決められるのです」
女傑(K)の唐突な『結婚』要求に驚愕するプレイヤー一同。11Sくんが一番驚いたでしょうね。女の妄執ぶりに戸惑いつつも約束を交わすという展開。弟としても策が実行されるなら異存はない。だが、少し圧倒されていたかも。
#Kの個性が露出してセッションで最大の分岐点の一つとなった。イメージ的には陰謀の『黒』に情念の『赤』が加わったとでもいう感じでしょうか。
逃げのびたフリをして城門に到着する女傑(K)。第三十一計『美人の計』が成功しているので大守とも順調に面会できる。涙を流して生還を喜ぶ叔父の橋瑁。
「わしもお前を見捨てようとした。もう、何も言うでない」
そして、数日後の夜。頃合いを見計らった女傑(K)が行動を起こす。叔父を訪ねて夜空を眺めながらしばし語らうシーンが始まる。そして、謀殺を敢行する。
「叔父上さえ余計な真似をしなければすべて上手くいったものを。(グッサリ)」
苦悶の声を上げて死んでいく大守橋瑁。第十一計『李、桃にかわって僵れる』が成功しているので判定はなし。突然の惨劇に驚いた警護の兵と派手に斬り結びながら、大広間へと走り出る女傑(K)。
孤立無援の戦いの中、名もなき雑兵が無我夢中で後ろから突き出した槍が女傑の顔を傷つけ、やがて十重二十重に取り押さえられる。(計略の代償なのでこれも判定なし)
二目と見られぬ顔の傷と無数の手傷を負って地下牢に叩きこまれる女傑(K)。
#名もなき雑兵、後ろから突き出した槍、二目と見られぬ顔。まさに“将軍”の味です。
一方、それを密かに見届けていた間諜(逆神)は暗殺成功を確認する。当初からの手筈通りに大守の死を流言蜚語として城内にばらまいてゆく。女傑(K)をその場で助けることはイベント敗北ゆえに不可能という印象だった。
ここで城内にまく噂について作戦タイム。
「王会が大守といさかいを起こし、発作的に殺してしまった」という案を提案するK。うなずきかけた面々。ここで反対を表明する私。
「恋に狂った大守の姪が頼まれてもいないのに実の叔父を刺し殺してしまった」という別の筋書きが提示される。
こっちの方が刺激的でインパクトもあるだろ? という説明。まさしく週刊誌的内容ながら事実にも近く、意外性もあることから民衆が信じやすいかもしれないと同意するブレイヤー諸氏。さっそく噂を流してゆく間諜(逆神)。
#これも重要な分岐点となった。この筋書きを公表してしまったのが大きい。
必死になって消し止めようとする王会の努力も空しく、狂気に走った大守の姪の噂は燎原の火のごとく広まってゆく。守備兵たちの動揺も激しかった。
ここで独自の判断により、任務を果たした間諜(逆神)が牢中の女傑を救い出す。手順通りではあるが救出は重要視されていなかった。いや、逆神はいい人ですな。
二目と見られぬ醜い傷を覆い隠して陣に運ばれてくる女傑(K)。ちなみにこの時は意識はない状態。それを見て複雑な表情を浮かべる文人(私)。
戦機を逃さずに総攻撃をかける反乱軍。動揺した敵はあっけなく崩壊する。落城のさなか最後に一騎打ちを所望する敗将王会。しかし、今更その必要もないと冷徹な一言で弓兵に始末させる武人(11Sくん)。いや、シビアでいいねえ。
「おのれ。俺のやってきたことは貴様にこの国をくれてやっただけなのか!」
絶望の言葉を残してまさに憤死する王会。PCたちの勝利が確定した瞬間である。晴れがましい気分で堂々と入城してゆく反乱軍いや正規軍。今日からは一国一城の主である。
だが、その時、プレイヤーの中から悪魔が一人現れる。いや、私なんですが・・・。
「まさか、あの女と本気で結婚してやる気ではありますまいな? それでは我々が大守殺しを策したと認めるようなもの。兄上の声望に傷がつく。まして、あのように二目と見られぬ傷を負っては・・・姉上などと呼びたくもない」
「ああ、私を非情な奴と蔑まないでください。これも兄上の為を思えばこそ」
かなり白々しい弟(私)のセリフだが、それは分かっていると「すぐさま」うなずく武人(11Sくん)。いや兄上、感動モノであります。忠誠度90→92に上昇した瞬間。
状況的には分からなくもない内容かと思う。だが、話が話だけにさすがに即答はできない武人(11Sくん)。間諜(逆神)と商人(明之介さん)も同様らしい。
「第一:仕方ないから結婚してやる。第二:結婚はせずに密かに囲い者にする。第三:門前払いして突き放す。第四:後腐れのないように死んでもらう」
11Sくんが考えやすいようにと選択肢を提示する文人(私)。
「私が思うには第三か第四の処遇が相応しいかと。まあ、兄上がどうしても情を捨て切れないとおっしゃるのなら第二の処遇でも仕方ないですが」
決断をせまられる武人(11Sくん)。悩みの末に彼が出した意見は・・・第一か第四のどちらかという両極端なもの。つまり、『結婚』するか『殺す』かである。それでさっぱりするから、という理由に深い感銘を受ける一同。いや、確かに武人的です。
個人的嗜好は異なれどあっぱれな兄上に対して忠誠度92→95へと急上昇。
ここで各PCの意見を尋ねてゆく文人。女傑の運命は多数決的なムードの中で決められてゆくことになる。可哀想だがこの場ではKだけが発言を許されない。
「お、俺はただの間諜です。そのような判断は・・・分を越えます」
視線を下にそらす間諜(逆神)。棄権とも消極的賛成(反対)とも取れる微妙な態度である。日和おったな、小市民め。しかし、あんたクロトワですかい?
そして、ここで明之介さんがとてつもない爆弾発言をかます。
「そうだね。第四案に近いけど、大守殺しの下手人として『見せしめ』に処刑するのはどうかな? 民衆も満足するし、我々の立場も正統化されるんじゃない」
あっさりとした表情で凄い内容を言う明之介さん。その場の空気がまさに激変。
誰一人として明確な反対表明はなく、女傑(K)の運命はまさに風前の灯火。これを引っくり返せるのは武人(11Sくん)の『愛』しかないという状況へとダメ押しされる。
#深い思惑はなく、思いつきをポロっと言ってしまったとのことです。しかし、ちょうど明之介さんの発言の順番でもあった為、劇的な効果をもたらしました。ということで明之介さんも死刑執行命令書にサインしてます(笑)。
#Kはこの時に「死んだな」と思ったらしい。いや、私もそう思ったよ。
私としても予想外な展開だった。逆神と明之介さんは女傑(K)に同情的な雰囲気だったので。個人的計算としては第三案(門前払い)にして、後の反撃イベントを楽しむつもりであった。城内を見回り中に刺されるとか、逆に返り討ちにするとか。
「・・・分かった。殺すことにしよう。ここまできたら同じこと。商人(明之介さん)の言う通りに見せしめにもしよう」
武人(11Sくん)の決断が下り、暗い面持ちでうなずく一同。さっそく汚れ仕事に取りかかろうとする間諜(逆神)。それを文人(私)が制止する。さすがに良心の呵責を感じたというのもあるし、見せ場なしで殺すのはプレイヤーに対して失礼だと思うので。
「思えば哀れな女でございますな。せめて、兄上の自らの手で・・・」
うむ、とうなずく武人(11Sくん)。一行は女傑(K)が待つ天幕へと向かう。
「ああ、やっとお会いできたのですね。婚儀の日取りはいつになりましょう?」
喜びにはずんだ声で思い人である武人に話しかける女傑。さすがに女性キャラに対して芸の細かいK。というより命がかかってるし。
それには答えずに無言で剣を抜く武人(11Sくん)。
「なぜです? 私を殺すと言うのですか」
しなだれかかって武人を見つめる女傑。ここでKが超絶能力(カード)の使用を宣言した。『草は栄くを春風に謝せず』で男を色香で惑わせようとする。いや、女として当然の権利であります。
対応する能力値的に武人不利かと思われたが、“将軍”が「負傷中のダイスは1個になる」と冷徹に指摘。これで女傑は窮地に陥る。二目と見られぬ傷なわけですから当然と言えば当然でしょう。
結局、惜しいところ失敗する魅了判定。さあ、覚悟せいというシーン。
「お待ちください。この男(文人)にそそのかされたのでございましょう! あなた様はこんなお方ではない。この男はいずれはあなた様をも裏切りまする」
「この男ですよ」と私を実際に指さしながら、最後の逆襲をかけてくるK。超絶能力の使用を再び宣言する。女傑最強の『五色、人の目を盲せしむ』である。色香で相手を誘導するという内容的には前回と同じようなもの。ただし、判定は不要という強力カード。
#この執念が旧世代の証か。一時的とはいえ、逆に追いこまれてしまった。
運命がやっと女傑(K)に微笑み、状況は一変かと見えた。びびる文人(私)。
しかし、超絶能力が使えるのは女傑だけではない。武人(11Sくん)が超絶能力『何の猪口才な』の使用を宣言する。すべてのカードを無効果する武人特有の必殺技。
#『何の猪口才な』の使用条件は本来は「戦闘中のみ」かもしれませんが、武人を強化するRPG研の特殊ルールということで採用しています。
愛していた男の剣によって胸を刺し貫かれる女傑(K)。「すまん」と武人(11Sくん)は一言だけ言い残す。一人一人立ち去ってゆくPCたち。最後に残った文人(私)は複雑な表情を浮かべながら、醜い傷が目立たぬように女の遺骸に布をかけてやるのだった。
#「あんた鬼やなー」とか「偽善者ですなあ」とか散々に言われる。責任を感じたというか、哀れと思ったのは本当ですよ。しかし、PCの死体に布をかけるという行為にシビれる部分があったのも事実かな。生者のみがこういった演出も可能なわけで。
女傑(K)の死でシナリオはまったく予想外の方向へ。どうするマスター?
ゆっくりと深呼吸をした後、“将軍”は腹を固めたようであった。その顔に焦りの色は見えない。淡々とした表情でシナリオを続けてゆく。いや、お見事です。
新大守の座に武人(11Sくん)が登り、東郡を我が物とする一同。領内には反発の声もあったが、前の大守橋瑁を直接殺さなかったことがプラスに働く。新大守は河内郡の大守王匡の身柄も握っており、勢力の躍進は目を見張らせるものがあった。いよいよ反董卓連合軍に加わり、天下に名を轟かせるのも近いかという空気。
しかし、その栄光の影で主君殺しという汚名は死んだ女傑(K)にすべて押しつけられていた。その遺骸は城内の広場に『見せしめ』としてさらされているのだった。
そして、数日後の朝、女傑の遺体がなくなっていた。その後、醜い傷をした女の亡霊を見たという声がどこからともなく上がり、大守殺しとの関連がささやかれ始める。
新大守(11Sくん)と側近たちは噂を打ち消そうと必死に動く。そして、亡霊騒ぎの裏に何者かの意図がからんでいることを知る。
#この新展開はさすが“将軍”。「さすが」と何回も言ってますが、ここからのストーリーの切り返しは見事の一言。マスタリングの教科書に取り上げてもいいくらい。
PCたちの尽力で亡霊騒ぎは静まったものの、城内の巡回を強化しても何ら手かがりはつかめないという状況に終わる。
そして、ある月夜のこと。
床についていた武人(11Sくん)が殺気を感じて跳び起きる。すると、目の前には醜い傷を顔に残し、長い髪をふり乱した女の姿が・・・。 短刀を手に襲いくる謎の女。
ここで枕元に武器があるかどうか判定が要求される。2D6で7以上とのことだが、残念ながら1足りずに失敗してしまう。手元に武器はないらしい。圧倒的に優勢と思われた武人(11Sくん)が窮地に立たされることになる。これも女傑(K)の呪いかもしれない。
一騎打ちモードに突入。それでも腕はこちらが上らしいのだが、11Sくんのダイス目がなぜか超低空飛行。彼の隣ではKが必死に念波を送って亡霊風の女を応援している。その怨念がダイスを動かしているのか? と思えるほどの片寄り具合。
遂には端まで追いこまれて重傷を負う武人(11Sくん)。超絶能力(カード)の『うム、これほどの腕の者がおったとか』で何とか真ん中まで戻すのだが。
#三国志演技では『シャトルゲージ・システム』という独特の戦闘ルールが採用されています。これはHPも負傷段階もない大胆かつ斬新なシステムです。キャラクターは8マスの盤上の中央に置かれ、1ターン毎に勝敗の判定をして移動させられます。そして、端まで追い込まれたら重傷、押し出されたら死亡となります。まさにPCゲームの光栄三国志の一騎打ちを再現したかのような、中途半端さのない独特の戦闘システム。
ここで他のPCたちが現場に到着。すばやく身を翻して逃げる女刺客。
「『当然』、毒は塗ってあるんでしょうなあ?」とKの怨嗟に満ちた指摘。
女の細腕では『当然』だな、とうなずく“将軍”。その結果、血を吐いて昏倒してしまう武人(11Sくん)。すぐに医者が呼ばれ、治療を施されるが意識不明の重体となる。
一方、女刺客に追っ手を放つが次々とかわされて逃げられてゆく。文人(私)が城門を閉ざすように命令し、超絶能力である第二十二計『門を閉ざして賊を捉える』を使ってやっと捕らえるのに成功する。
大方の予想通り、亡霊女の正体は河内郡で会った謎の美女、朧月その人であった。厳しい尋問にも弱音を吐かぬ筋金入りの密偵である。以下は文人(私)の対話シーン。
「東郡大守の橋瑁と噂の『山東の狼』を争わせるのには見事に成功したわ。でも、決着が早すぎたのよ。あの男は予想以上の武将だった。そう、この私を捕らえるほどの軍師もついているし。ああ、あなたを殺した方が良かったかしら」
「女、自分の立場を考えることだな。楽には死なせん。それより解毒薬はないのか? 差し出せば命は助けてやる。いや、何なら解き放ってやってもよい」
「残念ね。そんなものは初めからないわ。そうね、あの男が本物の英雄なら助かるんじゃなくて。それが天命ってところかしら」
厳重な警備を命じ、その場を後にする文人(私)。実際、武人(11Sくん)の容態は思わしくなかった。生死をさ迷っている状態である。
残ったPC二人を集めて討議を重ねる。領内の掌握、董卓軍への警戒が議題となる。そして最も重要な問題が大守死去の際の対処である。三人の内の誰かが後を継ぐのか、それとも名のある群雄の下に協力を申し出るのか。
間諜(逆神)も商人(明之介さん)もどうにも精彩を欠いていた。武人(11Sくん)と個人的に交流していただけに、彼亡き後の展望を描けないでいる。文人(私)としても、兄の存在なしで何ができるのかという冷めた思いはあった。結局、結論は出なかった。
三日三晩、高熱にうなされる武人(11Sくん)。それを固唾を飲んで見守るPCたち。
そして、運命の生死判定が訪れる。“将軍”は淡々とした声で8以上を要求。11Sくんが振るえぎみの手で二つのサイコロを振る。
結果は・・・『7』。ああ、またしても1足りない。それを見て、Kは勝利の微笑を浮かべていた。やはり、女の恨みは恐ろしい。これが天命であったか。
ということで『山東の狼』の臨終シーンとなる。
死の直前に意識を取り戻した武人(11Sくん)は枕元に三人を集め、最後の言葉を交わしてゆくというもの。一人一人に感謝の言葉を残してゆく。
以下は兄弟の別れ。これは今でもしっかりと覚えている。順番や細かい語句に多少のズレはあるけれど現在の記憶ではこうなる。ただ、内容的には大体正しいはず。
「兄上、私は残念でなりません。我ら兄弟なら、天下にその名を轟かせることもできたはずだった。いえ、私の才が及びませんでした。お許し下さい」
「いや、お前には感謝している。ところで抜け目のないお前のことだ。俺が死んだ後のことでも色々と動いているんだろう?」
「そ、それは・・・。はい。ですが兄上への忠誠心がなくなったわけではありません」
「はは、分かっている。俺がここまで来れたのはお前のおかげだ。俺の手に入れたものはすべてをお前に譲るから好きなようにするがいい」
「兄上っ、私が真に忠誠を捧げられる相手はあなただけです。これからも」
この時点でついに忠誠心100に到達。いや、まことに残念でありました。私のキャラが忠誠度100状態になるなんて奇跡的ですから。11Sくんの意志表明は渋かったねえ。
「だが、その言葉はもはや武人の元に届いてはいなかった」と“将軍”が重々しく言う。
しかし、実際には11Sくんのセリフが二度に分けられていたので、このコメントもしつこく二回も言い直されました。好きやね、“将軍”も。ま、医者の死亡宣告みたいなものか。
敬愛する兄の死を見届けた後、別室に間諜(逆神)と商人(明之介さん)を呼ぶ文人(私)。そこで当初の考えを捨て、あえて董卓の下につくことを提案する。
驚く二人に『兄の復讐』という本心を伝える。真の仇は女刺客などではなく董卓本人であり、面従腹背に甘んじながら復讐の機会をうかがおうと告げる。その為には憎い女刺客の命をも見逃そうと。
二人の同意を得た文人(私)は兄を殺した刺客である朧月と面会。董卓への忠誠心と立身出世の希望を伝え、その場で女を牢から釈放してやる。
その後、董卓から直命が下る。その乱暴な命令通りに東郡から絞りとれるだけの財貨を持ちだし、根こそぎ集めた三万の兵を連れて洛陽へと向かってゆくPCたち。
その後の彼らの未来は分からない。そして、東郡には悲恋と惨劇の伝説が伝わってゆくだろう・・・というところでセッション終了。以下は感想戦など。
もし、生き残ったら文人PCは曹操配下の二流の地方官で終わったかなというのが個人的な感想。武断派の兄を失って覇気もなくなったので。董卓に斬られる可能性も大。
今回の事件は「女を散々利用したあげく、惨たらしく殺し、立身出世をはたした武人が最後には女の亡霊にとり殺される」という鬼女伝説として長く語られてゆくのかねえ、なんて感想になる。伝説の正体はこんなものかもしれない。
#兄に悪事をそそのかした文人は鬼女に最初に取り殺される役かな。
とにかく「女の恨みは恐ろしい」というのが今回の教訓となった。ちなみに終盤のダイス目はKの呪いが染みついているようにしか見えなかった。全体を通してみると死んだ女傑(K)が主演女優賞を獲得したかもしれないという印象が大方の意見だった。このシナリオの流れは途中ではまったく予想できんかったなあ。
ここで当事者であるKのコメントを一部紹介してみましょう。
パーティアタックとしては、マスターが最初から仕組んだものでもなく、さりとてプレイヤーの凶行によって発生したものでもなく、なるようになったらこうなってしまった感じで興味深いですなあ。まあ、本来こういう風に発生するものなのでしょう。(K)
何が問題であったかというと、私のキャラが大守と血縁だったのが大問題だった。その後の出来事は、私としては何の後悔もなし。(K)
私の感想としては、Kの個性と激突したり、11Sくんの武人らしい意志決定に感銘を受けたり、“将軍”のマスタリングも一級品だったし、本当に楽しませてもらいました。未だに思考の流れを完璧に記憶しているのも凄い。思い出に残るシナリオというのが最終的には一番重要なセッションの評価基準だと思う。
さて、本編終了後の雑談も面白かったので少し。
『叔父を刺し殺して戻った女傑をどうするか』で盛り上がる。意外に多かったのが、結婚するか殺すかという11Sくんと同じ判断。囲っておくか門前払いというのは私だけ。確かに中途半端で政治屋的な思考かもしれない。
面白いというか恐ろしいのが“将軍”の意見。
「おお、よく帰ってきてくれた。祝言は近いうちにあげよう。お前の為に屋形を一つ用意しておいた。そこで少し待っていておくれ」その後、右手を振り下ろして「やれっ!」と一言。隠れていた雑兵たちが屋形に火をかける。
#実にビジュアル的。瞬間的に思いつくのがこれだぜ。恐ろしい奴よのう。
次に女傑(K)の選択について話題になる。あそこで結婚を要求してくるプレイヤーはアンタだけだよとうなずく面々。いや、マジで女の情念を感じたかも。
今回の“将軍”の意見は打って変わってロマンチックな香り。激しすぎる落差だな。
「これを私と思って大切にしてくださいませ」と髪飾りを渡す・・・らしい
ウン、ウンとそんな感じだよと同意する一同。しかし、Kから異論が。
「それは男の『エゴ』というものですな」というきびしいお言葉。
唖然とする我々。うう、反論できん。いや、その通りでしょうね。男が女性キャラを演じるとこんな感じになり易いかも。たしかに男にとって都合のいい女でしかないかもしれない。しかし、そんな指摘がパッと出てくるKって一体何者なんだい?