“Blade of Arcana” Re-View

文責:アートコンプレックスS

☆はじめに

 『ブレイド・オブ・アルカナ』は、鈴吹太郎氏とF.E.A.R.によりデザインされ、1999年にアスキー社から発行されたヒロイックファンタジーRPGです。近年発行されたRPGにしてはめずらしく(?)継続的にサプリメントによってサポートされ、2001年にはセカンド・エディションがエンターブレイン社から発売されました。その意味では比較的プレイ環境が充実しているRPGだと思います。
 近年のRPGをプレイする上でも、その内容を知っておくことは有意義なことでしょう。
 そういうわけで、『ブレイド・オブ・アルカナ』について紹介します.

★コンセプト

 暗く汚れた世界のなかで、明日のために戦う英雄的キャラクターを遊ぶRPG。運命に翻弄されつつもあくまで強大なる世界の敵と戦うことを欲する、といったヒロイックなキャラクターが喜ばれます。モチーフは『ベルセルク』(三浦建太郎、白泉社)といったところでしょうか.なお魔法や妖精族などファンタジックな要素も普通に認められます。
 ルールとしては、様々な特殊技能である[特技]や超絶能力[奇跡]を駆使しての、世界の敵とのヒロイックな戦いの再現、というところが売りでしょう。
 悲劇的な運命などを扱うルールもあるが、こちらはむしろフレーバー。悲劇的西洋風ファンタジーRPGにおもえなくもないですが、『深淵』などとは違い、プレイヤーキャラクターは必然的に救世の英雄です。『ベルセルク』にたとえるなら、グリフィスやモズグズ様ではなくガッツをやるゲームといえるでしょう。おそらく。

舞台設定

 舞台となる世界は「ハイデルラント」と呼ばれます。イメージは中世暗黒時代のヨーロッパ、とくに中欧、ドイツなどです。気候は寒冷で夏でも気温が20度を超えることはなく、冬は厳しい寒さとなります。さらに太陽は黒点が異常増幅しアバタ面にみえ、夜空に星は無く、月は三日月に欠けたままです。これは、世界がいわば堕落し、罪で汚れたためです。
 かつて天空の住人だった人たちの祖先は「闇」に魅せられ、地に堕ちました。光の使徒たる「アルカナ」は人たちを救おうとしたものの果たせず、「闇」によって打ち砕かれ、地上にばら撒かれたのです。
 「アルカナ」の欠片は「闇」に束縛され「聖痕(スティグマ)」として地上を漂うことになりました。そしてこの「聖痕」が、選ばれし者に宿り、その力となるのです。この選ばれし者は「刻まれし者(エングレイヴド)」と呼ばれます。
 「刻まれし者」は選ばれて「アルカナ」の力をもちます。それは「アルカナの刃」として「闇」の呪縛から「聖痕」を切り離し、解放するためです。
 「闇」から解放された「聖痕」すなわち「アルカナ」の欠片は天界に帰還します。それは光の使徒アルカナの復活、ひいては世界を「闇」から救うことにつながります。それはかつて祖先が犯した根源的な罪の償いでもあります。
 しかし「聖痕」は力です。その力に魅せられ「闇」に捕らわれた「刻まれし者」は「殺戮者(マローダー)」と呼ばれるものになり果てます。「殺戮者」とは、「聖痕」を解放することを良しとしなかった「刻まれし者」が、堕落した魂をもつ強大な敵となったものです。

プレイヤーキャラクターの立場

 プレイヤーキャラクターたちは「刻まれし者」です。ゆえに根本的に、プレイヤーキャラクターは人々の贖罪をはたす、救世の英雄なのです。
 キャラクターは世界を救う英雄と位置づけられますが、世間一般がプレイヤーキャラクターをそう認めているとは限りません。またプレイヤーキャラクター自身も、必ずしも「聖痕」や「刻まれし者」についての知識をもっているとは限りません。
 プレイヤーキャラクターは英雄であるとされますが、はじめから英雄として活動しているわけでは必ずしもなく、「英雄として生きる宿命を背負っている」のがプレイヤーキャラクターだとされます。
 キャラクターは「刻まれし者」の証である「聖痕」をもちます。ほとんどの人々は「聖痕」の存在や意味を知らず、それを目にしたとしても変わった形の痣や刺青としか思いません。しかし魔術師や聖職者といった知識人のなかには「聖痕」について知るものも多いです。
 この「聖痕」をもつことによって、プレイヤーキャラクターは絶大な能力である「奇跡」を使うことができるのです。

プレイヤーキャラクターの目的

 「ブレイド・オブ・アルカナ」のシナリオの主軸は、強大な敵である「マローダー」との対決です。プレイヤーキャラクターは、個々の設定にかかわらず、以下のものをシナリオ上の主要な動機としてもちます:

1.マローダーを倒す
2.聖痕を天に還す
3.マローダーから新たに聖痕を奪う

 「マローダー」はプレイヤーキャラクターたちの不倶戴天の敵なのです。
 キャラクターに応じて過去の背景や現在の職業はさまざまに異なります。細かい社会的な立場や「マローダー」を倒したい理由などはそれに応じてきまることになるでしょう。世界を救う使命に燃えるテンプルナイトから、すべての「マローダー」に復讐の念を抱く盗賊まで。
 以下のようなものが典型的なシナリオとされます:
 流れ者であるプレイヤーキャラクターが、マローダーの起こした事件に巻き込まれる。プレイヤーキャラクターたちは事件を解決し、その根源であるマローダーを倒す。そして再びプレイヤーキャラクターは流れていく……

プレイヤーキャラクターの運命

 プレイヤーキャラクターは3枚の「アルカナ(タロットカード)」で表現され、それぞれの「アルカナ」に対応した[聖痕]と[奇跡]の力をもちます。これがキャラクターの「アルカナ」の力をゲーム的に再現するのです。
 それに対して「闇の鎖」をゲーム的に再現するものが[鎖]です。
 英雄として運命に生きるキャラクターには、さまざまな理由から[鎖]が課せられます。[鎖]はそれぞれタロットカードで表現され、ゲームの上では人としての尊厳をあらわす[尊厳値]に影響します。また[鎖]は経験点にもなります。
 [鎖]はあるシーンに登場したり、マローダーの[悪徳]に触れたり、アルカナの力である[奇跡]を使用したりすると増えます。おおむね、[アルカナ]に関係したヒロイックな行動を行えば[鎖]が増えると考えれば良いでしょう。
 セッション(アクト)終了時に[尊厳値]が0以下だと、キャラクターはマローダーとなり、ノン・プレイヤーキャラクター化します。
 しかしキャラクターたちは宿命として(もといゲームコンセプト上)英雄的な行動をせねばならないので、宿命的に[鎖]に縛られマローダー化する危険を背負うことになります。これが「刻まれし者」の運命なのです。

☆おわりに

 F.E.A.R.のゲームだからでしょうか? 『N◎VA』同様、システムやセッション運営の面で独自性の高いゲームであるためか、少々‘敷居が高い’ゲームであるように筆者には思えます。とくに特異なデータ、なかでも超常能力である[奇跡]の扱いは、慣れないうちはとりわけ難しいかもしれません。
 しかしそれでも、サプリメントなどの展開の充実ぶりや、コンセプトの明確さから、お勧めできるRPGだと筆者は考えます。
 なお、セカンド・エディションではルール記述が明確化され、魔法関係のさまざまな特技のデータや魔神と呼ばれる闇の存在についての情報も追加されました。そのほか、詳しいサプリメント情報についてはF.E.A.R.のWebページ〈http://www.fear.co.jp/〉などを参照してください。

 それでは。


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